行きつけのバーに立ち寄り、仕事終わりの開放的なひと時を過ごす・・・。
その日もそんな日常が繰り返されるはずだった。
いつもの指定席に腰をおろすと、一人の男がゆっくりと私の方へ歩み寄り隣に座った。
真っ黒なロングコートを羽織ったその男は、全身黒づくめといういでたちだ。怪しいその姿に目を奪われていると、男のシルエットと店内の風景が入れ替わるような不思議な感覚に陥った。
一瞬、男と視線が交錯した。まるで吸い込まれるかのように、私は男の瞳を覗き込んだ。
そして、男は話し始めた。
「若者よ、正しい目をもって真実を見ろ。君が今見ているものが真実とは限らない。人は大抵思い込みのなかで生きていて、本質を見ることができないものだ。真実と虚構を見極めろ。」
虚を突かれたかたちで、話に耳を澄ませていたが、全てを語り終えた頃、あたかも初めから何も存在していなかったかのように、男の姿は私の視界から消えていた。
「いったいなんだったんだろう。私は幻を見ていたのか。」
気がつくとテーブルに1枚のメモが残されていた。
メモには意味深な文章と、暗号めいた絵が・・・。
|